例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
――おっと、やばい。いけないいけない。
「……兎に角、今日はこれで失礼させていただきます。ただ、榊原さんたちが急いでいらっしゃることも分かります。なので、明日、連絡させてください。」
沙耶は自分の短気な部分が、ひょっこり出てきてしまった事にはっとして、慌てて取り繕う。
「明日……!?秋元さん、、、もう少し時間を稼いでもらえませんか?今日だせない結論が、明日に出せるんですか?」
隣の廣井がぎょっとした顔で、こそこそと言ってくるが、沙耶は首を縦に振り、もう一度三人に頭を下げた。
「では、失礼致します。」
「秋元さん……!あ、では私も失礼致します!秋元さん!」
颯爽と部屋を出て行く沙耶の後を、弁護士である廣井が慌てて追いかけていく。
梟王百貨店の三人は、そんな滑稽な客が居なくなるのを、座ったまま見送り、沈黙がややあって。
「なんなん、あの女。」
虎井が、呆れたような声を出した。
「本当の世間知らずか、もしくは……」
榊原はそこでまで言うと口を噤み、腕を組んで考え込む。
「一瞬だけ、空気が変わった時がありましたね。僕机に触っていた手が痺れました。」
朝比奈が、沙耶が出て行った扉に目をやった。
「意外と、侮れないかもしれませんね。」