例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
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「秋元さんっ、秋元さん!!!わっ……」
かなりの速さで歩いた沙耶が、エレベーターの前でピタリと止まったせいで、危うく廣井がぶつかりそうになる。
「なんで、あんなこと言ったんですか!!!」
何とか踏みとどまった廣井は、沙耶の背中に、さっき答えられなかった問いを投げかけた。
秋元家の新しい当主は、短気で手も早いと聞いていた。学歴も高卒で止まっている。本家を追い出された故のこと、気の毒だとは思うが、やはり育ちを疑う。いかんせん浅はか過ぎる。物事の持っていき方が社会にはあるのだ。暗黙のルールのようなものが存在するのだ。
「貴女はここを乗っ取られる所なんですよ?時間稼ぎをできるだけして、何か策を考えなければならないんです。なのに、明日結論を出すなんて!」
廣井自身、何度も梟王百貨店には足を運んでいる。
事の成り行きを説明し、混乱は仕方ないと伝え、なんとか打開策を練っている所だった。
だから、今回のストライキの件に関しても、沙耶を会わせるのは得策ではないと思っていた。こんな小娘が、自分たちの新しいリーダーだ、と言われても、納得できないだろう。経営の事など何一つ知らないのだから、そう思われても仕方がないこと。だが、会って話がしたいと言われれば、応じない訳にもいかない。
仕方なしに、連れて来てみれば、先方はとっくに見切りを付けていた。