例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても


「確かに……」

前の小娘、否、沙耶が廣井に振り返る。

「軽率な発言をしたように思われても仕方ないかもしれません。その点はお詫びします。でも……答えは、もう出ているんです。」

「え……?どういうことですか?」


沙耶の発言に、廣井は目を白黒させて、訊ねた。
そんな廣井を、沙耶は楽しそうに見つめる。

「個人的には要らないと思っています。」


沙耶がにべもなく放った言葉に、今日が人類最後のような絶望の表情を浮かべる廣井。


「でも、譲る気なんて、さらさらありません。」

途端に廣井の顔がぱっと明るくなった。

「それを聞いて安心しました!」


エレベーターが到着した音がして、沙耶は中に乗り込む。

少し元気が出てきた廣井が続くと、扉がゆっくりと閉まった。



「……それでは、、経営陣を一新して、信頼できる者に任せてみてはいかがですか?」


廣井の提案に、沙耶の脳裏に浮かぶのは、坂月。

しかし、それを振り払うように頭を振る。


「いえ。彼らを追い出すのはフェアじゃありません。」

「そんなこと言ってる場合ですか?このままじゃ、追い出されるのは時間の問題ですよ?先手を打たないと!」

言うことを聞かないど素人に、目眩がしてきた廣井は、エレベーター内でよろけた。段々この仕事から手を引きたくなってきた。


「売られた喧嘩は買う主義なんで。ズルして勝ったって意味ないんですよ。」


そして、この小娘とももう関わりたくないと、廣井は強く願った。

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