例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
「ついでに言うと中もだぞ。ったく、俺があれからどれだけ大変な思いをしたと……」
言いかけて、異変に気付く。
「おい」
沙耶が、門を見つめたまま。
「こっち向けよ。」
振り返らない。
「おいって……」
肩を掴んで、振り返らせると。
「なんでーーーーー泣いてんだよ?」
予想だにしていない沙耶の泣き顔に、動揺する羽目になった。
沙耶は涙を拭うこともせず、呆然と立ち尽くしていた。
今雨が降っていたとしたら、雨粒だと思ったに違いない。
歪めてもいない、能面のような表情のない顔で、彼女は泣いていた。
しかし、空は、晴れている。
「何かあったのか?」
石垣は、沙耶の顔を覗き込んだ。
「!」
目が合った瞬間。
沙耶の顔が、真っ赤に染まる。
「わぁ!」
「うっ」
そして、こっちが驚くような声を上げて、石垣を突き飛ばすと、瞬く間に門を開けて中に逃げ込んだ。