例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
「おい!」


ピシャン!


続いて入ろうとすると目の前で閉められる。


「……てめぇ……相変わらず良い根性してんじゃねーか。」


石垣のこめかみが引き攣る。

門に手をかけ、開けようとすると、向こう側で沙耶が抑えているらしく、動かない。


「おまっ、此の期に及んで何してんだよ!開けろよ!」



沙耶は馬鹿力とはいえ、流石に石垣には勝てず、ついに門は開いた。


「なんなんだよ?!」


向かい合わせなり、逃げ場を失くした沙耶の視線は、石垣を前にして彷徨い、やがて困ったように俯いた。


こんな態度の沙耶を見たのは初めてで、石垣も弱ったなと首を掻く。



「まー、あの……なんだ、その……」


こんな時に、気の利いた言葉は何一つ浮かばず、気持ちを落ち着ける為に、息を一つ吐いた。



「とりあえず、話して楽になるなら話せ。俺で良ければ聞いてやる。もし、話したくないならーー」



束の間、視線を下に落とし、再び沙耶を見る。



「飽きるまで傍に居てやる。」




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