例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
沙耶自身、どうして、石垣の声を聞いた途端、涙が出てきてしまったのかわからないし、
納得もできない。



「……もう、飽きた。」
「っ、てめぇ、人が下手にでてりゃいい気になりやがって。」

ぼそ、言い返す沙耶に、石垣の頬が引き攣る。

「ほんっとかわいげがないな。お前さ、そんなこと言える立場じゃないんだぞ?そもそも俺がどうしてここに来たかっていうとだな―――。」


なんなら、昨日のこともあるし、沙耶にとって石垣は、できれば今は会いたくない相手だ。

でも。

そんなことよりも――。


「……情けない。」


涙は止まり、顔色もいくらか落ち着いてきた沙耶は、ぽつり、呟いた。


「――え?」


虚を突かれたように、石垣が訊き返す。

日が傾いてきて、庭に植えられている万両が、橙色に染まっている。


「自分が、情けない。」



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