例えばその夕焼けがどれだけ綺麗だとしても
「つまりな、敵は石垣かと思ってた、それだけの事だよ。」

「ーー敵?」


益々頭がこんがらがって来た沙耶。

石垣はそんな沙耶を真っ直ぐ見つめ返した。



「梟王が本来秋元のものではなかったということは?」

「あ、それは、廣井さんから聞いた。」

「なら、話は早い。」


彼女の反応に頷くと、石垣は、組んでいた腕を解きつつ、沙耶の横を通り過ぎて、庭をゆっくりと歩き出す。

アールグレイの香りが、その後を追う。


「会社を買収すると、必ず起きることがある。」



石垣はたわわに実る万両の枝を、ポキリと手折る。

それを沙耶に見せた。


「分裂、だ。支配される者とされない者。満場一致はまずあり得ない。改革は、痛みを伴う。」


その傷がずっと癒えないこともある、と石垣は続ける。



「梟王は、新しいリーダーを、今に至るまでずっと、受け入れてこなかったんだろう。」


万両の実がひとつ、音もたてずに落ちた。

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