ブラックコーヒーに角砂糖一つ
昼下がりの社長室でのんびりしているとスマホが鳴った。 (何だろう?)と思って出してみたら妻からのメールだった。
『今日から三日ほど旅行してきます。 お好きなようにお暮しくださいませ。』
またまた温泉旅行に出掛ける気だ。 いいご身分だねえ まったく。
苦笑しながらテーブルの上に置いてある急須を取った。 「熱いお茶でも飲もうかな。」
私がお茶を飲んでいると事務員の柏木由紀が入ってきた。 「社長に会いたいって方が来られたんですけど、、、。」
「私に?」 「そうです。 若い女の方ですよ。」
「通していいよ。」 「分かりました。」
それから5分ほどして入ってきたのは、、、。 「和子、、、。」
確かに死んだはずの娘 和子だった。 和子は私を見てニコッと笑うと風が雲を払うようにスーッと消えていった。
私が呆然としていると京子が入ってきた。 「何 ボーっとしてるの?」
「娘が、和子が会いに来たんだよ。」 「和子? 誰?」
「私の娘だよ。 ほら、焼き鳥屋を出た時にスーッと消えた、、、。」 「娘さんが会いに来たの? 娘さんも会社のことが心配だったのね。」
「そうだ。 和子も秘書室で頑張ってたからな。」 「確か病気で死んだのよね?」
「そうだよ。」 「じゃあ今度さあ、お墓参りに行きましょうよ。」 「そうだね。」
とは言うけど妻ともろくに墓参りをしなかったんだ。 緊張するなあ。
和子が死んで何年になるんだろう? けっこう経ってるよな。
その間、会社は荒波の中で浮いたり沈んだりしながらやってきたんだ。 それもやっと出口が見えてきた。
今日から妻はしばらく留守になる。 その間に墓参りを済ませようかな。
夕方、私はまた京子のマンションに居た。 「奥さんはまたまたry旅行に出ちゃったのね?」
「そうなんだ。 毎年2回は行ってるなあ。」 「お気に入りの温泉でも有るのかな?」
「だと思うよ。 あいつは元々長野県の生まれだから。」 「信州か。 いいなあ。」
コーヒーを飲みながら喫茶店が在った辺りに目をやる。 もう何も残ってはいない。
「速いなあ。」 「そりゃそうよ。 建設会社も持ってるんだもん。」
組長の弟が殺されてからそんなに時間は経っていない。 思えば私がこのマンションに来るようになってからどれくらいだろう?
来るたびに私は京子を抱いてきた。 若い頃の嫁みたいにね。
ほんとに京子は誰とも絡まなかったのだろうか? なぜここまで一人なのだろう?
会社ではごくごくふつうの秘書の一人だったはず。 それが今では、、、。
今夜も私は京子のマンションに来ている。 明日、昼から和子の墓参りに行く予定だから。
暗闇の中で何かが光った。 でも私にはそれが何なのか見当も付かなかった。
そんな真夜中のこと。 スマホの緊急地震速報が鳴り響いた。
「なになに? 地震だって?」 「この音は神経に悪いわねえ。」
二人で居間にやってくるとガタガタと揺れ始めた。 「怖いなあ。 こんな真夜中に揺れないでよ。」
「そんなこと言ったって相手は地球様だ。 人間の力じゃどうにもならないよ。」 「そりゃそうだけど、、、。」
揺れが収まって眼下に目をやる。 そこいらに車が止まっていたらしい。
「そういえばさっき、、、。」 「あれは誰かがフラッシュを焚いたのよ。」
「フラッシュ?」 「たぶん心霊写真でも撮ってたんじゃないかなあ?」 「何で?」
「さあねえ。 この辺りは心霊スポットが近くに在るから。」 「心霊スポットねえ。」
「建てかけでそのままに放置されてるマンションが有るでしょう? あそこも幽霊が出るって騒がれてるのよ。」 「幽霊ね。 騒がれるほうも迷惑だろうなあ。」
「女の子だとか言ってたっけなあ。 なんかね、着物を着てる人なんだって。」 「着物?」
「うん。 明治か大正くらいの人じゃないかって。」 「そんな人がマンションの廃墟に出るのか?」
「分からないわね。 写真を見たわけじゃないから。」 「そうか、、、。」
それにしてもここ数か月、いろんな事件が起きてるな。 橋の下で見付けたあの女もそうだったし、、、。
揺れたおかげで寝れなくなってしまった私たちは深夜の街へ出て行った。
『今日から三日ほど旅行してきます。 お好きなようにお暮しくださいませ。』
またまた温泉旅行に出掛ける気だ。 いいご身分だねえ まったく。
苦笑しながらテーブルの上に置いてある急須を取った。 「熱いお茶でも飲もうかな。」
私がお茶を飲んでいると事務員の柏木由紀が入ってきた。 「社長に会いたいって方が来られたんですけど、、、。」
「私に?」 「そうです。 若い女の方ですよ。」
「通していいよ。」 「分かりました。」
それから5分ほどして入ってきたのは、、、。 「和子、、、。」
確かに死んだはずの娘 和子だった。 和子は私を見てニコッと笑うと風が雲を払うようにスーッと消えていった。
私が呆然としていると京子が入ってきた。 「何 ボーっとしてるの?」
「娘が、和子が会いに来たんだよ。」 「和子? 誰?」
「私の娘だよ。 ほら、焼き鳥屋を出た時にスーッと消えた、、、。」 「娘さんが会いに来たの? 娘さんも会社のことが心配だったのね。」
「そうだ。 和子も秘書室で頑張ってたからな。」 「確か病気で死んだのよね?」
「そうだよ。」 「じゃあ今度さあ、お墓参りに行きましょうよ。」 「そうだね。」
とは言うけど妻ともろくに墓参りをしなかったんだ。 緊張するなあ。
和子が死んで何年になるんだろう? けっこう経ってるよな。
その間、会社は荒波の中で浮いたり沈んだりしながらやってきたんだ。 それもやっと出口が見えてきた。
今日から妻はしばらく留守になる。 その間に墓参りを済ませようかな。
夕方、私はまた京子のマンションに居た。 「奥さんはまたまたry旅行に出ちゃったのね?」
「そうなんだ。 毎年2回は行ってるなあ。」 「お気に入りの温泉でも有るのかな?」
「だと思うよ。 あいつは元々長野県の生まれだから。」 「信州か。 いいなあ。」
コーヒーを飲みながら喫茶店が在った辺りに目をやる。 もう何も残ってはいない。
「速いなあ。」 「そりゃそうよ。 建設会社も持ってるんだもん。」
組長の弟が殺されてからそんなに時間は経っていない。 思えば私がこのマンションに来るようになってからどれくらいだろう?
来るたびに私は京子を抱いてきた。 若い頃の嫁みたいにね。
ほんとに京子は誰とも絡まなかったのだろうか? なぜここまで一人なのだろう?
会社ではごくごくふつうの秘書の一人だったはず。 それが今では、、、。
今夜も私は京子のマンションに来ている。 明日、昼から和子の墓参りに行く予定だから。
暗闇の中で何かが光った。 でも私にはそれが何なのか見当も付かなかった。
そんな真夜中のこと。 スマホの緊急地震速報が鳴り響いた。
「なになに? 地震だって?」 「この音は神経に悪いわねえ。」
二人で居間にやってくるとガタガタと揺れ始めた。 「怖いなあ。 こんな真夜中に揺れないでよ。」
「そんなこと言ったって相手は地球様だ。 人間の力じゃどうにもならないよ。」 「そりゃそうだけど、、、。」
揺れが収まって眼下に目をやる。 そこいらに車が止まっていたらしい。
「そういえばさっき、、、。」 「あれは誰かがフラッシュを焚いたのよ。」
「フラッシュ?」 「たぶん心霊写真でも撮ってたんじゃないかなあ?」 「何で?」
「さあねえ。 この辺りは心霊スポットが近くに在るから。」 「心霊スポットねえ。」
「建てかけでそのままに放置されてるマンションが有るでしょう? あそこも幽霊が出るって騒がれてるのよ。」 「幽霊ね。 騒がれるほうも迷惑だろうなあ。」
「女の子だとか言ってたっけなあ。 なんかね、着物を着てる人なんだって。」 「着物?」
「うん。 明治か大正くらいの人じゃないかって。」 「そんな人がマンションの廃墟に出るのか?」
「分からないわね。 写真を見たわけじゃないから。」 「そうか、、、。」
それにしてもここ数か月、いろんな事件が起きてるな。 橋の下で見付けたあの女もそうだったし、、、。
揺れたおかげで寝れなくなってしまった私たちは深夜の街へ出て行った。

