A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 渚も自分が好きだと言ってくれた。
 大翔は〝凪咲〟に言われたように錯覚した。
 
 はじめのうち、大翔はこの倒錯した関係に溺れた。

 渚を抱くときは、ずっと彼女を見つめ続けた。

 そうしなければ、つい凪咲を想い浮かべてしまい、罪悪感にかられるから。

 渚を愛するとき、大翔は「ナギ」と呼び続けた。
 かつて、凪咲をそう呼んでいたときのように。

 そうすると本当に凪咲を手に入れたような気がして、心も体も高ぶった。

 けれど、日が経つうちに、最初の興奮は鎮まり、憂鬱な感情が大翔を支配するようになった。

 当たり前だが、渚は凪咲ではない。

 盲目的に自分を信頼し、惜しむことなく、全身全霊で愛してくれる渚。
 それに引き換え、凪咲というフィルターを通してしか、渚を愛せない自分。

 なんて酷いことをしているのだ、俺は。
 そう自覚してからは、心がきしみだし、ひと月も経たないうちに、自分を誤魔化せなくなった。

 以前から不眠傾向ではあったけれど、さらに悪化して、睡眠薬なしには眠ることができなくなった。

 次に会ったとき、渚に事情を全部打ち明けて、そして別れを告げなければ。
 いくら頭を下げたところで、渚に対する罪を帳消しできないことは百も承知だったけれど。
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