A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 そんなとき、家から呼び出されたのだった。
 父親が倒れたからすぐ帰れ、と連絡があった。

 丁度良い機会だと思った。

 どうしても、凪咲に訊きたい。
 本当に凪咲の意思で、兄を選んだのか、と。

 そうしないと自分は一歩も前に進めない。

***

 梅雨明け前の蒸し暑い午後だった。
 実家の最寄り駅のホームに降りると空気が肌にまとわりついてくるようだった。

 タクシーを降り、最初に母屋を訪ねたが誰もでなかった。
 大翔は裏庭に回り、結婚後、新婚夫婦用に改装した離れの呼び鈴を押す。

「はーい」と奥から声がして、暗い廊下の向こうから、水色のサマーニットに細かい柄のフレアスカート姿の凪咲が現れた。

「大翔……くん。久しぶりね」
「ああ、元気そうだな」
「うん」

 凪咲。
 髪がだいぶ伸びているけれど、でも変わっていない。
 離れていた3年の歳月なんて、一瞬で霧散した。

 そして、たった一言、言葉を交わしただけで、もう、こんなに胸が苦しい。

 やっぱり凪咲が好きだ。
 自分にとって、この世で唯一の人だ。
 今すぐ、ここから連れ去りたい。

 表面上、凪咲にはなんの屈託もないように見えた。

 大翔の心に苦いものが広がる。

 もう俺は、彼女にとってどうでもいい存在になったのか。
 そう思うと、心がざわついた。
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