A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 いや、でも……
 もし、兄貴に大切にされ、幸せに暮らしていることがわかれば、何も言わずにこのままそっとしておこう。

 凪咲が現状に満足しているのなら、それを壊す気はさらさらなかった。
 彼女が幸せなら、それでいい。

 必死で平気なふりをして、大翔は「親父は」と尋ねた。

「木更津の病院に入院されているわ。一緒に行こうと思って、大翔くんが来るのを待ってたのよ」
「兄貴は?」
「今日は出張で大阪に行っていて。明日、朝一番の飛行機で帰ってくる予定なの」
「わかった。俺が運転するから、キー貸して」
「ありがとう。あんまり運転得意じゃないから、助かる」

 帰って早々、ふたりきりになれる機会があるなんて。

 運命が背中を押している。

 大翔にはそう思えた。
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