A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 家とは反対方向だ。

「大翔くん、道、違ってるよ」
 首を傾げながら凪咲が言う。

「ああ、わかってる」
「どこに行くつもり?」
 凪咲が不安そうに尋ねた。

 それには答えず、大翔は道路を覆う雨を、音を立てて跳ね上げながら、海岸沿いの道を走っていった。

「ナギ」
 大翔は声をかけた。

「その呼ばれ方、久しぶり」
「兄貴と一緒になって、今、幸せ?」
「えっ?」

 凪咲の表情がにわかに曇ったのを、大翔は見逃さなかった。
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