A Maze of Love 〜縺れた愛〜

***

 車はホテルのガレージに入っていった。
 ワンガレージタイプのラブホテル。
 大翔は無言で車を降り、空き室のボタンを押した。

 凪咲もすぐに降りてきて、後ろから大翔の手をひっぱった。
「どういうつもり、こんなところに連れてきて。ねえ、すぐ戻って」

 大翔は正面から両肩をつかんで、凪咲の顔をのぞき込んだ。

「ごめん。(よこしま)な気持ちで連れてきたわけじゃない。どうしてもふたりきりで話がしたかった。誰にも邪魔されない場所で。ここしか思いつかなかったんだ」

「そんなこと言われても……ねえ、だめだよ。もしあの人に知られたら……ねえ、帰ろう。それか、どこか別のところで」

 ふたりで言い合っているところに、他の人の車が入ってきた。

「行こう。人に見られるよりはいいだろう」

 大翔は凪咲の肩を抱き、部屋に通じる階段に向かった。
 凪咲はまだ、納得がいかない顔をしていたけれど、しぶしぶ大翔に従った。


 落ち着いた内装の部屋だった。

 凪咲はまだ不安そうにあたりを見回している。
 大翔はソファーに座るように促し、冷蔵庫からペットボトルのウーロン茶を出した。
< 34 / 48 >

この作品をシェア

pagetop