A Maze of Love 〜縺れた愛〜
「俺、ナギにずっと聞きたいことがあったんだ」
「聞きたいこと?」

「ああ。なんで兄貴と結婚したんだ」

 凪咲はあきれ顔で大翔を見つめた。

「いまさら、そんなことを訊いてどうするの。もう4年も経ったのに」
「まだ、たったの4年だ。俺にとっては」

 凪咲は大きなため息をつき、髪をかき上げた。

「一馬さんが好きだからに決まってるでしょう」
「嘘だ」
「嘘じゃない」
「じゃあ、なんで俺が嫌いになったんだよ、急に」
「嫌いになった訳じゃないけど、でも……」

 大翔は凪咲の手を取り、真正面から見つめた。
 凪咲は、横を向いた。

「あの日、何があったんだ」
「あの日って?」
「ナギが高2のとき。足を捻挫したことがあっただろう。あれからだ。急にナギの態度が変わったのは」
 
 あのころはうかつにも結びつかなかった。
 でも、今ならわかる。
 予想に間違いはないだろう。

 休日、ふたりきりの離れ、そして……凪咲の傷ついた顔。

「別に。なんにもなかった」
「お願いだ。正直に話して。今でも、どうしても納得がいかないんだよ」
「ねえ、もう、やめて! いまさらそんなこと、蒸し返さないでよ」
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