A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 凪咲は立ち上がり、出口に向かった。

「わたし、帰るから」

 大翔は肩をすくめた。
「帰れないよ。車のキーは俺が持ってる」

 凪咲はキッと眦をあげた。
「歩いて帰る」

 まったく……気が強くて頑固なところ、変わってない。
 母親にいくらダメだと言われても、俺がいる母屋にやってきていた、あのころと。
 
 俺のナギ……
 やっぱり、どう考えてもおかしい。
 ふたりが離れていなければならないなんて。

「ナギ……」
 大翔は腕を伸ばして凪咲を背後から抱きしめた。

「お願いだ。本当のことを教えて」
「……離して。お願い、離して」

 抗議の言葉をくりかえしながらも抵抗する気は失せているように、大翔には思えた。
 凪咲の、固くこわばっていた体の力が徐々に抜けていくのがわかる。

「ナギ、好きなんだ。俺、ナギじゃなきゃだめなんだよ」
「大翔」

 そうやって抱きしめているうちに、凪咲の肩が小刻みに震えだした。
 大翔は凪咲の肩を抱き、そっと自分の方に向けた。

 目に涙を溜めたまま、凪咲は大翔を見つめた。

「そんなこと、言わないで。今日、会ったときからずっと、我慢してたのに。わたしもずっと好きだった。子供のころから。今だって大翔が好き。でも、今更、どうしようもないじゃない。わたしはあなたのお兄さんの妻なんだから」

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