A Maze of Love 〜縺れた愛〜
 凪咲は大翔の胸に飛び込んだ。
 そして、子供みたいに泣きじゃくった。

「ナギ」
 大翔は両手で凪咲の涙をぬぐい、それから唇を重ねた。

「やめ……」
 でもすぐに、凪咲は抗議の言葉を飲み込んだ。
 何度もキスを繰り返すうちに彼女の腕も大翔の背中に回ってきた。
 そして、必死にしがみついてきた。

 唇を離し、まだ涙にぬれた瞳をのぞきこむ。
「兄貴との生活は幸せじゃないんだな」

 凪咲は小さく頷いた。
「結婚したのは、あなたからわたしを奪って縛りつけるためだけだから。はじめから愛情なんて欠片もなかった」
 
 凪咲は大翔の胸にその身を預けた。
 彼は彼女をそっと抱き上げ、部屋の奥にあるキングサイズのベッドに向かった。

「……ナギ。愛してる」
 凪咲を横たえて、その上に覆いかぶさり、彼女の頭に手を添えて優しく撫でながら、何度も何度も口づけを繰り返す。

 離れていた4年の歳月を取り戻そうとするかのように。

 唇を離して見つめると、凪咲も赤くなった目で見つめ返してきたが、そこにもう抗議の色はなかった。

「俺……今すぐ、ナギが欲しい」
「うん」

 凪咲は小さな声で、でも、はっきり答えた。
「わたしも」と。
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