A Maze of Love 〜縺れた愛〜
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「大翔が思っている通りだと思う」
情熱の刻が過ぎさり、並んでベッドに横たわっていると、凪咲が静かにつぶやいた。
「無理やりだった。家には母がいなくて。捻挫で動けないし。どうしようもできなかった。自分はもう汚れてしまった、一生、大翔に知られたくないって思ったの、あのとき」
「でも、俺のせいだよ。あいつは俺を苦しめたかっただけなんだから」
「わかってる。それでも、わたしは大翔を裏切ったと感じた。だって……あのとき、最終的には受け入れてしまったから、あの人のこと」
その日から一馬は凪咲の元に通ってくるようになった。
それは凪咲の母も承知の上だった。
「母は言ったわ。一馬さんに逆らってはだめだって。そうしないと、ここを追い出されてしまう。仕事も家も失って、また元の生活に逆戻りになるからって」
何も知らなかった凪咲に、一馬はあらゆることを教えこんだ。
でも、それはけっして愛の行為ではなかった。
凪咲を抱きながら、一馬はいつも冷ややかだった。
そして、一馬は事あるごとに、凪咲に吹き込んだ。
「いまさら大翔に抱かれるわけにはいかないよな。だって、凪咲が淫乱な子だってバレてしまうからね」とか。
「まだそんなに触れてないのに、こんなになってるよ。凪咲は本当にイケナイ子だ」とか。
そう自分は汚れてしまったと、凪咲が思いこむような言葉を浴びせかけた。