A Maze of Love 〜縺れた愛〜

 ***

「大翔が思っている通りだと思う」
 情熱の(とき)が過ぎさり、並んでベッドに横たわっていると、凪咲が静かにつぶやいた。

「無理やりだった。家には母がいなくて。捻挫で動けないし。どうしようもできなかった。自分はもう汚れてしまった、一生、大翔に知られたくないって思ったの、あのとき」

「でも、俺のせいだよ。あいつは俺を苦しめたかっただけなんだから」
「わかってる。それでも、わたしは大翔を裏切ったと感じた。だって……あのとき、最終的には受け入れてしまったから、あの人のこと」

 その日から一馬は凪咲の元に通ってくるようになった。
 それは凪咲の母も承知の上だった。
 
「母は言ったわ。一馬さんに逆らってはだめだって。そうしないと、ここを追い出されてしまう。仕事も家も失って、また元の生活に逆戻りになるからって」

 何も知らなかった凪咲に、一馬はあらゆることを教えこんだ。
 でも、それはけっして愛の行為ではなかった。
 凪咲を抱きながら、一馬はいつも冷ややかだった。

 そして、一馬は事あるごとに、凪咲に吹き込んだ。

「いまさら大翔に抱かれるわけにはいかないよな。だって、凪咲が淫乱な子だってバレてしまうからね」とか。

「まだそんなに触れてないのに、こんなになってるよ。凪咲は本当にイケナイ子だ」とか。

 そう自分は汚れてしまったと、凪咲が思いこむような言葉を浴びせかけた。
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