A Maze of Love 〜縺れた愛〜
「母親以外の誰かに相談すればよかったって、今なら思うよ。でもあのころはそんな屈辱的なこと、絶対できないって思っていた。そういうふうに思うように、一馬さんに洗脳されていたのかもしれない」
ただ、一馬は凪咲を捨てはしなかった。
けれど、それは凪咲にとっては、一生、一馬に縛りつけられることを意味したのだけれど。
卒業式の日、彼が約束通り、サイン済みの婚姻届を持ってきたとき、母は、これで一生安泰だと喜んだ。
凪咲は母のために、自分を殺した。
「大翔が好きだった。ううん、今も好きだよ。世界の誰よりも。だからさっきは嬉しかった。大翔もわたしを好きと言ってくれて、わたしを愛してくれて。もうそれで充分だよ」
「ナギ……」
「わたし、愛されてるんだって実感できたの、今日が初めてだった」
大翔は身の内が滾って熱くなっていくのを感じた。
一馬への憎しみが膨れ上がって、出口を求めて暴れている。
そして、そばにいながら、凪咲を救えなかった自分に対する怒りも膨れ上がった。
「このまま、どこかに行こう。俺たちのことを誰も知らないところに」
「無理だよ。あの人から逃れることなんてできない」
「大丈夫だ。何があっても俺が凪咲を守るから」
「大翔」
もう一度、濃密に唇を合わせてから、ふたりは部屋を後にした。
ただ、一馬は凪咲を捨てはしなかった。
けれど、それは凪咲にとっては、一生、一馬に縛りつけられることを意味したのだけれど。
卒業式の日、彼が約束通り、サイン済みの婚姻届を持ってきたとき、母は、これで一生安泰だと喜んだ。
凪咲は母のために、自分を殺した。
「大翔が好きだった。ううん、今も好きだよ。世界の誰よりも。だからさっきは嬉しかった。大翔もわたしを好きと言ってくれて、わたしを愛してくれて。もうそれで充分だよ」
「ナギ……」
「わたし、愛されてるんだって実感できたの、今日が初めてだった」
大翔は身の内が滾って熱くなっていくのを感じた。
一馬への憎しみが膨れ上がって、出口を求めて暴れている。
そして、そばにいながら、凪咲を救えなかった自分に対する怒りも膨れ上がった。
「このまま、どこかに行こう。俺たちのことを誰も知らないところに」
「無理だよ。あの人から逃れることなんてできない」
「大丈夫だ。何があっても俺が凪咲を守るから」
「大翔」
もう一度、濃密に唇を合わせてから、ふたりは部屋を後にした。