極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる

本当の気持ち

「珍しいな、まだ月曜だってのに、奏斗から飲みの誘いがあるなんて」
 バーのカウンター席で奏斗の隣に座りながら、功成が言った。三十分ほど前に着いてすでにバーボンを飲んでいた奏斗は、無言でグラスに口をつける。
 その沈んだ表情を見て、功成はなにがあったのかをだいたい察したらしい。バーテンダーにいつものブランデーを注文してから、奏斗に言う。
「で、ロンドンの彼女に振られたってわけか」
「振られて大人しく諦めたくはないんだ」
 奏斗はグラスを見つめたまま不満そうな口調で言った。
「だったら、なんなんだよ」
「……彼女の本心がわからない」
「本心、ねぇ」
 目の前にブランデーのグラスが置かれ、功成はバーテンダーに「ありがとう」と礼を言ってグラスを手に取った。
「訊かなかったのか?」
 功成の問いかけに、奏斗は苦しげに答える。
「訊けなかった」
「おまえらしくないな」
「奪い取ってしまいたいとは思ったんだ」
 奏斗は小さく息を吐いてバーボンを飲み干した。
 土曜日、姉に頼まれて車で産婦人科に迎えに行ったとき、偶然二葉に再会した。あのときは本当に嬉しかったが、二葉の体調が悪そうで気になった。送ろうとしたときに、二葉がバッグについていたキーホルダーを隠したが……あれはマタニティマークだった。
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