極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 それを知ったのは、約束の三ヵ月後に支払い明細書を持って彼の部屋を訪ねたときだった。部屋には圭太郎の新しい彼女がいて、その女性のものばかりが置かれていた。つまり、二葉のものはすべて無断で捨てられていたのだ。ものだけでなく、彼に対する二葉の想いも約束も。
 あまりにもひどい裏切りだった。
『よくよく考えて気づいたんだ。どう考えても俺たちは理解し合えない。だったら、二葉を三ヵ月も待つ意味なんかないよなって。そこまでの価値は二葉にないだろ?』
 その言葉には本当に打ちのめされた。
 結局彼とはそのままになってしまったが、両親は退職する前からずっと二葉の選択を応援してくれていた。
(お父さんとお母さんに少しでも早くいい報告をしたい)
 そのためには一人でがんばらなくちゃいけない。
 二葉は気持ちを引き締めて、再び本に視線を戻した。



 二葉が滞在しているのは、インターネットで予約できる民泊サービスで見つけた五階建てフラットの一室だ。狭い階段を挟んで両側に一部屋ずつというスタイルで、その三階――イギリス英語で言うセカンド・フロア――にある。推理小説やドラマでも有名なハイド・パークの南側に位置し、外観こそ古いものの、室内は改装されていて快適だ。
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