極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる

エピローグ

 十二月中旬に入り、二葉は毎日のようにマンションの近くをウォーキングしている。出産予定日の四十週〇日を過ぎたのに陣痛が来ないためだ。陣痛を促す効果があるということで、ウォーキングのほかに階段の上り下りやスクワットなどを助産師に勧められたそうだ。
 ここ数日、奏斗は在宅勤務に変えて、昼休みの時間、二葉と一緒に近くの広い公園を歩いている。今日は金曜日で、午後から休みを取った。
 公園の桜の木には葉が一枚もなく、寒そうだ。
「二葉、寒くないか?」
 奏斗は隣を歩く二葉を見た。
「私は大丈夫。奏斗さんは?」
「歩いているから温かい」
「私も」
 二葉はにっこり笑って言った。
 彼女は安定期に、夢だった恋愛ファンタジー小説の翻訳を終えて、訳文を出版社に提出した。そして、校正された原稿、いわゆる初校が二葉に戻され、修正箇所などのチェックも済ませた。あんなに大きなお腹でパソコンデスクに着くのは大変そうなのに、本当にすごいと思う。
 あとは出版社が本として出版するのを待つだけだ。二葉の夢が具体的な本という形になって世に出る日を、奏斗も楽しみにしている。
(楽しみなのは、君が生まれてくることもだよ)
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