極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる
 二葉はスマホを出して時間をチェックし、メモアプリに時刻を打ち込んだ。
「じゃ、奏斗さん、帰ろう」
 二葉が立ち上がろうとするので、奏斗はさっと立ち上がって手を貸した。
「陣痛って始まったらわかるって言われたけど、本当にそうなんだぁ」
 二葉は感慨深げに言いながら、しっかりした足取りで歩き出した。
 男が陣痛を経験したら死ぬ、などと聞いていたので、二葉にそんな死にそうな痛みを経験してほしくない、とずっと思っていた。
(思ったほど痛くないのならいいんだが……)
 奏斗は心配しつつ、二葉の様子にほんの少しの安堵を覚えた。



 しかし、本陣痛はそれとはまったく違うということを、その日の夕食のあとで思い知った。二葉がソファの上で体を丸めて顔を歪めていたのだ。
「痛いのか?」
 食器を片づけていた奏斗は、二葉に駆け寄った。
 声を出すのもつらそうで、二葉は苦しげな表情で頷く。
「もう病院に行ってもいいんじゃないか?」
「まだ……十五分間隔なの」
「こんなに痛がっているのに、まだ行けないのか!?」
 つい声を荒らげた奏斗に、二葉は笑みのようなものを浮かべた。
「ゆうちゃんもがんばって生まれてくる準備をしてるのよ」
「二葉……」
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