極秘の懐妊なのに、クールな敏腕CEOは激愛本能で絡めとる

異国での一夜

(わぁ……)
 テーブルに置かれたティースタンドを、二葉はうっとりと眺めた。
 細い金色のスタンドに、縁が花弁のようになった白い大皿が三枚。一番下の皿にはキュウリとスモークサーモンのサンドイッチ、二段目の皿には素朴な見た目ながら焼き色がおいしそうなスコーン、一番上の皿にはフルーツののったプチタルトとプチケーキ、それにカラフルなマカロンがのっている。
 アンティーク調のテーブルや椅子がエレガントな雰囲気のこのカフェは、ハイド・パークを望むラグジュアリーホテルの真向かいにあった。
 通りすがりに『あのホテルってハイド・パークを望めることで有名なんですよね』と言ったら、実はそこに泊まっているのだと奏斗が話してくれた。そのまま流れでホテルに電話で問い合わせたところ、運良く空きがあったので、二葉は一番安い部屋を借りてチェックインを済ませてから、このカフェに来たのだ。
 一番安いとはいえ、ラグジュアリーホテルだ。予定外の出費になったけれど……泊まる場所を無事確保できたのだ。それに、憧れのアフタヌーンティーを前にして、朝から沈んでいた気分はすっかり上向いていた。
「いただきます」
 二葉は小声で言って、まずはサンドイッチを手に取った。食べやすいサイズのそれは、具材の新鮮なキュウリにスモークサーモンの塩味がちょうどいいバランスだ。
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