ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「なんでよっ!」コートニーは泣き喚く。「お父様はクロエよりコートニーのほうが大好きだって言ったじゃないつ!!」
「コ、コートニー!!」
ロバートはさっと顔を青ざめて娘の失言を咎めようとするが、徒労に終わった。
コートニーは父親の腕の中で必死にもがきながら、
「お父様の嘘つきっ!! あんなに侯爵夫人なんかよりお母様のほうが綺麗だし、侯爵夫人の娘よりあたしのほうが可愛いし、それに世界で一番あたしたち母娘を愛してるって言ったじゃないっ!! 本邸にいたら妻と娘のせいで、息が詰まるって!」
「や……やめなさい!」
「嘘つき! 嘘つき嘘つき! お父様の嘘つきっ!! 妻も娘もとっくに愛情なんかなくて、ただ義務で置いてあげているだけだって言ってたのにっ!!」
コートニーの大音声の金切り声が部屋中に響いた。
それから重たい沈黙が背中にのしかかってくる。彼女の興奮と反比例するかのように、真冬のような冷たい空気が父ロバートと娘クロエの間に吹き込んだ。