ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜


 奇しくも、そのとき継母のクリス・パリステラ侯爵夫人が顔を出した。
 彼女はにこにこと取り繕ったような笑顔でスコットを見ている。その作られた完璧な慈愛の表情は、獲物を狙っているようにもクロエには見えた。

「初めまして、侯爵夫人。私はクロエ嬢の婚約者のスコット・ジェンナーと申します」と、彼は新らしい侯爵夫人に一礼をする。

「ご機嫌よう。あたくしはクリス・パリステラ。この子たちの母親よ。……それにしても、スコット公爵令息様は素敵な方ねぇ。あたくし、一目見てどきどきしちゃったわぁ!」

「そんなことは――」

「でっしょう!? お母様ぁ! あたしもびっくりしちゃったぁ! お異母姉様に、こぉ~んな格好いい婚約者がいただなんて!」

「そうね。クロエが羨ましいわぁ」

「もうつ! お母様にはお父様がいるでしょう!?」

「あら、そうだったわね。――それで、三人揃ってなんのお話をしていたの?」
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