ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜



「…………ぼ」

 しばらくして、スコットが弱々しく呟いた。

「僕は……クロエに……どうやって償えば…………」

「はっ」

 皇子は鼻で笑って、それから冷めた目で公爵令息を見た。

「貴公が出来得る限りの最大の謝罪は、今後、二度と彼女の目の前に現れないことだな」

 スコットは目を剥く。
 皇子は黙って踵を返した。


 そして、またぞろ暗闇に一人残される。急激に全身が冷やされて、震えが止まらなかった。

 頭の中はクロエのことでいっぱいだった。
 一体、なにがいけなかったのだろうか。
 皇子の口振りの様子だと、自分はきっとコートニー嬢たちに騙されていたのだろう。そして、無実の婚約者を……。

(いや……)

 スコットはかぶりを振る。
 それは違う。他人のせいにしてはいけない。

 たしかに彼女たちは口八丁で自分のことを欺いたのだろう。でも、それをすっかり信じ込んで、愛する婚約者の言葉に耳を傾けなかった自分が……一番悪い。

「うっ……うぅ…………」

 涙はとめどなく溢れ出て、止まらない。

 あのとき、ちゃんとクロエの話を聞けば良かった。手紙ではなくて、直接彼女と話し合えば良かった。何度断られても、どんな障害があっても、彼女の顔が見られるまで、粘り続ければ良かった。


 でも、どんなに過去を悔やんでも、もう遅いのだ。









 翌日、それまで無実を主張していたスコット・ジェンナー公爵令息が、ついに供述を始めた。

「僕が……僕が一人で計画を立てて、全てを執り行いました…………」

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