ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

70 二度目の決別が訪れました!

 馬車は、酷く乗り心地が悪かった。

 国で一番美しく整備されている王都の石畳の上を走っているのに、ガタガタと激しく揺れて、固い木の上の臀部がひりひりと痛んだ。ツギハギだらけの幌は、強風を受けて吹き飛んでいきそうだった。

 スコット・ジェンナー元公爵令息――今では平民となったただのスコットは、これまで乗ったこともない粗末な馬車の中で、じっと耐えていた。









 スコットは取り調べに対して、洗いざらい白状した。

 魔法大会における魔石を使用した不正行為は、全て彼が一人で企てたそうだ。
 魔法が使えないコートニーを優勝させて……彼女との婚姻を認めてもらおうと考えていたらしい。クロエとは、婚約を解消して。

 スコットとコートニーは愛し合っていた。

 しかし、彼は既にクロエと婚約を結んでいる。
 彼の婚約者にはなんの瑕疵もないし、それどころか聖女として人々から尊敬の念を集めている。品行方正で、不貞をしているわけではなく、婚約解消をする理由なんてどこにも見つけられなかった。

 そこで、彼は考えた。それなら、異母妹のほうも異母姉に負けない功績を上げればいい。魔法大会はそのきっかけの一つだった。

 まずは聖女として名高い姉を打ち破ってから、妹の実力を周囲に知らしめる。
 そして、優勝者への国王陛下からの褒美として、クロエとスコットの婚約解消――及び、新たにコートニーとスコットの婚約を願い出るつもりだった。

 だから、なんとしてでも、この試合は優勝しなければならなかったのだ。
 そのために、彼は家門の魔石を使った。

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