ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

80 侯爵の躍進

 神殿の祭壇には神官を中心に、国の中枢である高位貴族たちが集まっていた。どの人物も家門を代表する男性貴族ばかりだ。

 その中にはロバート・パリステラの顔もあった。
 場内の貴族たちが騒めく。その声は全てが否定的なものだった。

「せめて聖女が出たほうが良かったのでは?」

「いやいや、さすがに当主のほうが魔力が強いだろう」

「いずれにせよ、パリステラ家はもうお終いね」

「聖女は他の上級家門に養子に出すべきだろう」

 ……などと、彼らは演劇の感想を言うかのように、好き勝手に囁き合っていた。

 ロバートは思わず赤面する。まさか、己がこのような悪意に晒されるとは思いも寄らなかった。
 貴族たちの退屈しのぎの噂話は、プライドの高い彼には毒針のように胸の奥まで突き刺さっていったのだった。
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