会ったことのない元旦那様。「離縁する。新しい妻を連れて帰るまでに屋敷から出て行け」と言われましても、私達はすでに離縁済みですよ。それに、出て行くのはあなたの方です。
 そういった諸々の手続きとは別に、カニンガム公爵家の養女となったわたしを当時王子だったクレイグ様から婚約者にしたいと驚くべき申し出があった。わたしがカニンガム公爵家の養女となってニ年ほど経ってからのことである。

 クレイグ様は、義父の剣の愛弟子の一人だった。彼も王太子になるまでずっと軍に在籍していて、王国や近隣諸国の災害時に遠征をしたり、他国との合同演習などで大活躍をした。

 そのクレイグ様が義父母のお見舞いにいらっしゃった際、わたしがこのカニンガム公爵領の領地内を案内させてもらったのが縁で、お近づきになった。
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