会ったことのない元旦那様。「離縁する。新しい妻を連れて帰るまでに屋敷から出て行け」と言われましても、私達はすでに離縁済みですよ。それに、出て行くのはあなたの方です。
「任せろ。そうだな。来年には双子、いや、三つ子でも四つ子でもいいな。あるいは、毎年でもいいだろう。とにかく、おれたちも跡継ぎは欲しいから、たくさんつくって一日でもはやくあたらしい領主になってもらう。そう長くは待たせることはない」
「ク、クレイグ様。いくらなんでも、そんなにはムリです。というよりか、まだまだ気がはやいですよ」
「そ、そうなのか? おれはもう待ちきれん」

 クレイグ様は、そう言うなりわたしを抱き寄せた。

 みんなが見ている前で。
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