見知らぬ彼に囚われて 〜彼女は悪魔の手に堕ちる〜

エピローグ

 この小さな街の広場ではある日から、幼子のための人形劇が不定期で行われるようになった。

 とはいえ立派なものではなく、自らの手だけで動かす手作りの人形に、手作りの小さな箱に作られた小さな劇場。

 そして人形を操るのは……

「『お姫様は魔物に追いかけられ、逃げていきます』」

「『助けて〜!』」

 レオナは台詞を言いながら姫の姿の人形を走っているように見えるよう懸命に動かす。

「『しかし魔物は追いかける』」

 その後ろを、“彼”の持つ魔物姿の人形が追いかけていく……


 レオナと彼の二人が仕事の合間を縫って始めたのは、子供たちのための小さな人形劇。

 それはレオナが彼の夢を少しでも叶え、その姿を見たいと願ったため。
 彼は彼女の気持ちを嬉しく思い、すぐにその思いつきに快諾したのだった。


「お疲れ様、貴方」

 劇が終わりレオナは、役のほとんどを見事にこなしていた彼を笑顔で労う。
 レオナは劇の間、姫の役と人形の準備や背景の布を変える役目をしていた。

「ありがとう、レオナ。君も疲れただろう?明日も仕事だ、帰るとしよう」

 彼がそう言い二人で荷物を纏めようとしていると、大人たち数人がやって来る。
< 22 / 23 >

この作品をシェア

pagetop