後ろの席の五十嵐くんと私の、2人だけの秘密

五十嵐くんの目。


『男の人』っていう目をしてる気がして、ゾクゾクした。


ゆっくり私の方に寄ってくる五十嵐くんに、近づいちゃいけない気がして、彼を見つめたまま後ずさる。


狭い部屋の中で、すぐに私の足が椅子にぶつかった。


その奥にある机に五十嵐くんが手をつくと、五十嵐くんの体が自然と前屈(まえかが)みになって、私と五十嵐くんの顔が近づく。


「今日、なんで来てくれたの?」


私の頬の横あたりで問いかける五十嵐くんの吐息がくすぐったい。
変な声が出そうになるのを我慢しながら、負けじと言い返す。


「来てって言われたから。」


「別に、来たくないなら断っていいんだけど?」


――来たくないわけないじゃん。来たいよ。会いたいもん。


「断る理由、なかったから。」


そう言うと五十嵐くんは少し顔を上げて、私の顔を覗き込んできた。


「俺が昨日、言ったこと、ちゃんと覚えてる?」


「昨日…」


「松田さんのこと、好きって言ったよね?」


ドクン、と心臓が跳ねる。


「でも、あれは…」


「添い寝して欲しいって思ってるって?そりゃ思うよ。好きなんだから。」


「添い寝してくれるから、でしょ?」


「んなわけねーだろ。なんでそうなるんだよ。」


「五十嵐くんが、私のこと、それ以外の理由で好きになるわけないもん。」


「なんでだよ。毎日会いたいって…そばにいて欲しいっていう理由で、好きになったらダメなの?」

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