極悪人の抱き枕になりました。
お湯を使うのはレトルトのルーを温めるためだ。
麺は耐熱容器に入れてその中に水を入れて、レンジで温めればすぐに出来上がる。

伊吹は今にも倒れてしまいそうだったから、時短料理のカタがいいと判断したのだ。
ものの5分ほどで一人前のパスタを作った夏波は伊吹が待っているリビングへと運んだ。


「できたよ」

「いい匂いだな」


顔についていた血をティッシュで吹いていた伊吹が顔を上げる。
血がとれたからか、さっきよりも幾分見える顔になっている。


「喧嘩してきたの?」

「喧嘩じゃない。仕事だ」


『どんな?』と聞きそうになって口を閉じる。
ヤクザ同士の抗争とか、色々あるんだと思う。

そんな話を聞いても怖いだけだし、夏波にはなにもわからないから聞くだけ無駄だ。


「うまかった」

「え、もう食べたの?」


気がつけば伊吹はあっという間にパスタを平らげてしまった。
食事をする暇もなく仕事をしていたんだろう。


「俺は少し寝るから、お前は好きにしてろ。外には出るなよ」
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