極悪人の抱き枕になりました。
「あなたたち、誰ですか？」

「俺たちは○○組のものです。あなたのお母様にお金を返してもらいに来ました」


向かって右手に座っている、黒髪を丁寧になでつけた男が説明する。
口調は丁寧だけれど威圧感がある。


「返すって……借金があったってことですか？」

「そうですね。今少し話し合ったんですが、お母様に返す宛はないということでした」


男の視線が夏波の体を這うように動く。
夏波は居住まいを正してその視線から逃れた。


「だけど」


夏波が『いくらですか？』と、質問する前に左側に座っている男が身を乗り出してきた。
金色に染めた髪の毛をツンツンに立たせていて、指先一本一本までよくわからない入れ墨が入っている。

その容姿に夏波はゴクリとツバを飲み込んだ。
母親がちょっとヤバイところからお金を借りてしまったことは明白だ。


「娘さんをこっちにくれるなら、借金はチャラにしてもいいという話になった」


金髪男の言葉に夏波は一瞬動きを止めた。
それからジワジワと目を見開いていく。
その視線は自分の母親へ向けられていた。
< 3 / 52 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop