極悪人の抱き枕になりました。
「どういこと!?」

「ごめんなさい!」


母親が更に小さく身を縮める。
ふるふると震えているところを見ると、金髪男の言っていることは本当らしい。


「もうそれしかないの。わかってちょうだい」


母親はそれっきりうつむいて顔をあげなくなってしまった。
夏波がなにを言っても反応しない。
うつむいて、震えるばかりだ。


「ということで、一緒に来てもらう」


ふたりの男が立ち上がり、夏波の腕を両側から掴んで立たせる。


「ちょっと待ってよ! こんなのおかしいよ! こんな、人身売買みたいなっ!」


そんなことが現代であっていいはずがない。
必死に訴えかけても誰の耳にも届かなかったのだった。
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