極悪人の抱き枕になりました。
「今は見なくていい」

「そうか?」


金髪男も無理に案内するつもりはないようで、リビングへ戻ってきた。


「そう言えば、名前は?」


ここまでついてきたものの、男の名前を聞いていないことに気がついた。
夏波の情報はきっと勝手に調べているだろうけれど、こっちは相手のことをなにもしらない。
それじゃフェアじゃなかった。


「俺は河本伊吹。28歳だ」


強面だからもっと年上だと勝手に思っていたけれど、自分と3つしか違わないみたいだ。
これが普通の男ならお兄ちゃんができた感覚で嬉しかったかも知れない。


「スマホを出してもらおうか」


ふと思い出したように伊吹が言った。


「スマホを? どうして?」


わざととぼけてみる。
スマホがあれば外部との連絡が安易に取れるからに決まっていた。
警察に通報される前に取り上げておこうというのだ。

車に乗って移動していたときには、後部座席に座る夏波の横に黒髪男が常についていたから、スマホを取り出すタイミングはなかった。
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