幸せでいるための秘密
*
「元気そうだな」
和やかな音楽とともに、薄暗い照明の下を新郎新婦がゆったりと歩いている。テーブルをひとつひとつ周り、中央のキャンドルへ火を灯して回るイベントだ。ハート型に広がる炎を囲み、招待客たちは皆にこやかに幸せのご相伴に預かっている。
大学時代の親友・美咲の結婚式に呼ばれると聞いたとき、真っ先に思い浮かんだのは、きっとあのメンバーが集まるだろうということだった。Y大学弓道部。私は大学生活の大半を部活動に捧げ、部で知り合った何人かは就職した今でも付き合いがある。
今ほどの――
練り歩く主役たちには目もくれず、私ひとりを見つめて話し始めた彼は、まさしく弓道部の人間だった。
波留樹。
容姿端麗成績優秀、大学卒業後はストレートで弁護士になった、弓道部の『王子様』。
「おかげさまで、元気にやってるよ。波留くんはどう?」
「まあまあだ。見ての通り、とでも言うべきかな」
「波留はあまり変わらないよね。中原は綺麗になったけど」
逆隣から口を挟んできた椎名くんが、ほとんど一口でワインをあおった。中性的な顔立ちのわりに、仕草がいちいち男らしい。
「波留もそう思わない?」
「そうだな」
「やめてよ、二人とも」
椅子の座り心地が急に悪くなってくる。
椎名くんは私たちの代で弓道部の部長を務めていた。全員一致で選ばれたのは、弓道の腕だけが理由じゃない。誰とでもすぐに仲良くなれる人当たりの良さや、親身になって相談を聞いてくれる優しさ。あらゆる面で人として優れていると感じたから、私も彼に賛成した。
だからこそ、腹が立った。彼はすべてを知った上で、綺麗になった、なんて素知らぬ顔で言ってのけたのだ。
波留くんの前で。
……私が大学時代の一年間を恋人同士として過ごした、このひとの前で。
「元気そうだな」
和やかな音楽とともに、薄暗い照明の下を新郎新婦がゆったりと歩いている。テーブルをひとつひとつ周り、中央のキャンドルへ火を灯して回るイベントだ。ハート型に広がる炎を囲み、招待客たちは皆にこやかに幸せのご相伴に預かっている。
大学時代の親友・美咲の結婚式に呼ばれると聞いたとき、真っ先に思い浮かんだのは、きっとあのメンバーが集まるだろうということだった。Y大学弓道部。私は大学生活の大半を部活動に捧げ、部で知り合った何人かは就職した今でも付き合いがある。
今ほどの――
練り歩く主役たちには目もくれず、私ひとりを見つめて話し始めた彼は、まさしく弓道部の人間だった。
波留樹。
容姿端麗成績優秀、大学卒業後はストレートで弁護士になった、弓道部の『王子様』。
「おかげさまで、元気にやってるよ。波留くんはどう?」
「まあまあだ。見ての通り、とでも言うべきかな」
「波留はあまり変わらないよね。中原は綺麗になったけど」
逆隣から口を挟んできた椎名くんが、ほとんど一口でワインをあおった。中性的な顔立ちのわりに、仕草がいちいち男らしい。
「波留もそう思わない?」
「そうだな」
「やめてよ、二人とも」
椅子の座り心地が急に悪くなってくる。
椎名くんは私たちの代で弓道部の部長を務めていた。全員一致で選ばれたのは、弓道の腕だけが理由じゃない。誰とでもすぐに仲良くなれる人当たりの良さや、親身になって相談を聞いてくれる優しさ。あらゆる面で人として優れていると感じたから、私も彼に賛成した。
だからこそ、腹が立った。彼はすべてを知った上で、綺麗になった、なんて素知らぬ顔で言ってのけたのだ。
波留くんの前で。
……私が大学時代の一年間を恋人同士として過ごした、このひとの前で。