婚約とは安寧では無いと気付いた令嬢は、森の奥で幸せを見つける

第13話

 朝、屋敷に戻ってきた私はウイル様が使っていた部屋へと入る。
 決して踏み入る事の出来なかった想い人の部屋。
 それでも、確かめたい事があった。

 部屋の構造は私の部屋と変わらない。置いてある物も大差は無かった。
 だが一点。
 ベッドの横の木製テーブルの上に本が置いてあった。
 その装丁から日記帳だと分かる。
 いけない、そう思わないでもなかったが、思い切ってそれを開くと……。

「え?」

 中身は白紙だった。
 これは一体?
 不思議に思った私だったが、はっとして、頂いたペンダントを日記帳へとかざしてみる。
 ペンダントは鈍い光を放つと、白紙の上に文字が現れた。

 昔、このような細工の魔術について聞いた覚えがあった。

 現れた文字を読み込んでいく。
 そこには、彼の母の死を始めに、森の中での私の出会いと日々について。
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