婚約とは安寧では無いと気付いた令嬢は、森の奥で幸せを見つける
 滑稽だ。惨めだ。なんたる醜態(しゅうたい)か。魔女を着飾るにこれ以上は確かに無い。
 家の者は全て味方では無かった。唾を吐いた者に容赦はいらぬ。それが本意で無かったとしてもだ。
 黒い魔術は呪いの輝き。黒曜石よりなお深い。目覚めた私はパペットにもなれなかったのか。
 ルーイン、貴女は白い。何処までも、誰にでも交わる白さだ。己の心すら白で塗りつぶせば、海千山千の殿方とて敵では無いだろう。

 ありがとう、私は地に擦り付けずとも頭を磨く事が出来た。本当に感謝する。
 この身にある黒は魔術だけでは無いと知る事が出来た。

「サラタ殿、水場仕事は女の役目など前時代的だ。俺にこなせない不器用さは無い」

 洗濯物を洗っているとウイル様は、盥ごと拐って続きを行う。

「いえ、我が君。このような事は下女の身に相応しき事。相応しきは相応の仕事をこなしているのみですので、どうぞお気になさらず」

 私の言葉に、ウイル様は眉根を寄せて口をへの字に曲げる。
 何か変な事を言っただろうか? 首を傾げれば、彼は苦笑して私の頬に手を当てられた。
< 8 / 34 >

この作品をシェア

pagetop