選んでください、聖女様!

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 成人を迎えて、初の登城。理由はわかっている。『夫を選ぶ』為だ。
 私、セラ・ツェルタークはこの島国ミスティリアの聖女だ。聖女とはこの魔法で溢れた世界で唯一魔法が使えない代わりに、守りの力を授けられた存在のこと。必ず長女がこの力を受け継ぎ、代々ミスティリアを五十人の聖女補佐と共に結界で守ってきた存在だ。成人を迎えると、必ず王宮に登城させられる。王宮側が選んだ、『夫候補』の中から選ぶ為に。
「はあ……」
 王の間に行く道すがら、溜息が出てしまう。自分の夫くらい、自分で選びたい! という考えのセラは、この登城の意味を母から聞かされてから物凄く憂鬱だった。母は成人した直後の登城で『夫候補』の中にいた父に一目惚れし、そのままゴールインした。私には言いたくないが、好きな人がいる。彼が居ればいいな……と思ってはいるが、彼の性格上、候補には上がっていないだろう。そう考えると、もの凄く憂鬱だ。
 そんなことを考えていると、もう王への謁見の場……玉座の前に来てしまった。セラは姿勢を正し、王に挨拶をする。
「セラ・ツェルターク、参りました」
「おお、待っていたよ。此度の聖女も綺麗だね」
 そう言ってにこやかに笑顔を向けてくれたのは、国王のディティス国王だ。温厚で争いの嫌いな国王は、民からの信頼も厚い。
「今回の登城、わかっているとは思うが……君の『夫』を選んで欲しい。来てくれ」
 その言葉の後、三人の男性がカーテンの陰から出てきた。
「この三人の中から選んで欲しいのだ」
(単刀直入にきたな~。まあ、わかっていたことだけど……あら?)
「あの、陛下……恒例では四人の筈では?」
 そう、『夫候補』は必ず四人の中から選ぶのが通例となっていると母から聞いていた。なのに出てきたのは三人。セラは首を傾げた。
「あ~……もう一人は他国から特別な公爵を呼びたかったんだがね、婚約者が出来てしまって呼べなかったんだ」
「そうでしたか」
 とはいっても、候補者は三人も残っている。この中から選べと言われても、私には好きな人がいる。セラは言葉を発した。
「陛下、発言をお許しください」
「うん、なんだい?」
「私は互いに愛し合うものとの結婚を望んでおります。今この場で決めることは出来ません」
 セラの言葉に、周りにいた大臣達が騒めく。そんなのお構いなしに更に言葉を続ける。
「可能ならば、時間をください。その中で愛せると思った方を夫にさせて欲しいのです」
「うん、聖女がそれを望むならばそれを快く受け入れよう。ただ、自己紹介はさせておくれ」
「はい、ありがとうございますっ」
 国王の言葉に、セラは喜んだ。これで彼と結ばれることも可能だ。そう思った。
「右から、第二騎士団隊長、アンディ・コドル。王宮お抱えの魔法使いユーゴス・ゴルドクス、私の息子、第二王子のクリスタスだ」
 三人は一斉にセラを見つめた。まさか、幼馴染のアンディと第二王子が候補に入っているなんて驚きだった。
「では、これで謁見は終了とする。聖女よ。時間はあげるが、与えられる猶予は三カ月だ。その間に誰か選んで欲しい」
「……了解しました」
 深く頭を垂れ、セラは玉座の間から出て行った。三か月……だが、彼とはすぐに話はつきそうだから大丈夫! そう、セラは思っていた。
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