神様の寵愛は楽ではない
 皮膚科の先生は言う。 
 興奮したりしたら血流の変化で、血管が浮き出てきて細胞の隙間に流れ出て、血があざのようにみえることもまれにあるそうである。お風呂上がりに太ももとかにまだらな模様が浮き出ることがあるのと同様に、胸に出るバージョンだそうである。
 血液検査の結果は健康そのもので、病院に結果を聞きにいくとこころまでつきあってくれた華連は、病気じゃなくて良かったね、と言ってくれた。

 寮の部屋に戻って一人になったとき、わたしは泣いた。
 エッチしようとすれば胸にあざが浮き出るなんて、そんな醜い姿を好きな男にさらさなければならないのだ。
 絶望したわたしと違って、華連は180度異なる反応をする。

「性的に興奮すると模様が浮き出る体質って、ロマンティックで素敵じゃない。あんたは自分でもわかってなかったからびっくりしたんだろうけど、次はうまくいくわよ。欠点だと思うものこそ、むしろチャームポイントなんだから!モデルの反り上がった鼻やしゃくれた顎は、個性的でうらやましいぐらいなんだから!」

 美人に言われてもまったく説得力はない。
 当事者でない華連は一体なにを想像しているのかうっとりとしているけれど、エッチで興奮するとあざが胸に浮き出てくるわたしは、それを目の前にして男が萎えるのを二度と目の当たりにしたくなかった。
 一度でも立ち直れないのに、二度続けば一生誰からも愛されないことが確定してしまうような、絶望的な気持ちになるのだ。

 そういうことで大学生になって早々のロマンスデビューは失敗し、華連はその証人だった。
 周囲がくっついたり別れたり三角関係でこじれたりしている間、わたしはこの一年恋愛とは縁のない生活を過ごしたのである。

「だからあんたが誰かに一目惚れするなんてもう二度とないかもしれないんだから、あんたの方が乗り気なんだから、この奇跡を逃してはだめよ」
「奇跡、大げさじゃないの」
「いいから、次ぎにあの、ちょっと残念な男にあったらなんとしてでも声を掛けなさい!後を付けでも家をつきとめなさいよ。相手は学生じゃないんだから、どうやって収入を得ているのかを確認しないと」

 収入の確認とは現実的なアドバイスである。

「それってストーカーみたいじゃない。それに声を掛けて何を話せばいいかわからないんだけど」
「あのときのお礼でもなんでもいいから!とにかく、ミーナが一生誰にも愛さず愛されず、殻に閉じこもって終わるか、人並みの人生を送れるかの瀬戸際なんだから、がんばりなさい!ミーナは自分で思う以上に素材はいいんだから自信もちなさいよ」
「また、薄気味悪がられたら……」
「だから、チャームポイントなんだって、わからない子ね。嫌なら、それこそ全く問題ないじゃない。みせたくないのならみせなければいいんだから!」

 そんなものなのだろうか。
 胸のあざは、熱い湯につかってもでなかった。
 どうも、性的な興奮をしたときだけのようである。
 わたしは体の欠陥のために、恋して誰かと付き合うことにきわめて臆病である。
 
 寮でわたしの部屋でそんな恋話をした翌朝に、とうとう学校で彼を見つけたのだった。
 
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