いつも側にいてくれたね


それにしても夏芽と直生は来るの遅くないか?

あいつら一緒に来るって言ってたよな。

俺は客の着替えを待つ間、廊下にある椅子に座ってスマホを取り出し時間を確認した。

あれ? 直生から何度も着信が入ってる。

あいつら迷子になったのか。

直生に掛け直そうとスマホを操作していると、撮影室になっている教室からクラスの女たちが出てきて俺の動作を止めさせた。

「えっと、あなたは湯川くんだよね?」

同じクラスのヤツに忘れられたのか、俺。

「は? お前何言ってんの?」

「あ、この話し方は湯川弟くんで間違いないね」

「大丈夫かよ、お前ら」

「ねーねー、湯川くん。湯川くんって双子だったの? 湯川くんのお兄さんってかっこいいね」

誰にも話したことないのに俺が双子だってなんで知ってるんだ。

「もしかして、ここに直生が来たのか?」

「うんうん、さっきまでいたんだけど。彼女さんと帰っちゃったよ」

「はぁ? 彼女さん?」

俺はこいつらが何を言ってるのか理解できない。

「湯川くんのお兄さんと彼女さん、すごく良い感じだったよ。私、こっそり写真撮っちゃった」

「そうそう、皆いるのに急に抱き合うからびっくりしたよね」

「あーあ、イケメン兄には彼女がいるのかぁ。残念だな」

「ちょっと待てよ。お前たち何を言ってんだよ。直生は一体誰と来てんだよ」

「お兄さんね、可愛い子と一緒だったよ。それにお兄さんと彼女が仲良く手を繋いで歩いているところを何人も目撃してるんだよ。間違いないね」

手を繋いでたってなんだよ。

抱き合ってたってなんだよ。

「お前ら変なこと言うなよ。ありえねーだろ」

「そんなに信じないなら双子のお兄さんと彼女さんの写真、見る?」

そう言ってクラスの女が内緒で撮ったという写真を見せてきた。


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