拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
そして週末が訪れた。
「行ってきますわね」
「姉様本当に一人で大丈夫?」
「アデールも一緒だから大丈夫よ! それに護衛としてダニエルもついて来てくれるから安心よね」
因みにアデールとダニエルはお付き合いをしています。私が図書館にいる間は二人で私を待ってくれているのです。
ハリスに行ってくるわね! と言って王宮に向かいます。
「……緊張するわね」
ダニエルは騎士団に知り合いがいるようで、何度か足を運んだ事があるらしく練習場へ案内してくれました。学園では騎士科にいたそうで知り合いがいるんですって!
「月に何度か騎士団の練習場は開放しているので見学の方が沢山いるんですよ。騎士団員は人気がありますから、個人の応援隊などもあって、試合形式の練習では声援があったりして賑やかで盛り上がります」
へぇ~。知らない世界でしたわ! ダニエルの言う通り、練習場へ近づくと黄色い声援に混じり男性の声が聞こえて盛り上がっていました。声援を聞いて騎士団員たちもやる気になるのだそうですわ。
ダニエルが、閣下の姿を知っているそうなので、探してくれています。
「お嬢様、あちらの壁際で指導している方がアルヌール閣下ですよ」
「わぁ。ここから見ても大きな方だと言うことが分かるわね!」
「少し怖そうな面持ちですね」
アデールが言う。
「厳しい方のようですが、稽古の時は厳しくて当然ですから、へらへらしている方がおかしいですからね」
ダニエルが言う通りね。凛々しいお方ですわね。
「どうやってお声をかければ良いの?」
お名前を叫ぶわけにもいけませんわよね……そして呼びつけるだなんて失礼だわ。
「休憩時間がありますので、その時にお声がけをしてはいかがですか? 応援隊の方は休憩中に差し入れなどを渡して騎士達と交流を深めていますよ」
「そうなのね。知らない世界だわね。教えてくれてありがとう」
もうすぐ休憩時間だということで、練習を見ていました。しばらくすると号令がかかり休憩となりました。