没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
「ただし、条件があります」

「なんだ?」

ローマンが今度は肩眉をピクリとあげた。

「ザッカリー卿とははじめてお会いいたしました。信用できる方なのかまだわかりませんわ。ですから、わたくしが戻ってきた時に現在の伯爵家の財産を補償してください。これ以上とは言いません。これ以下になっていた時に今と同じ財産になるよう補填していただきますわ」

ほう。なかなか。

交渉できる女性は男性優位のミカリオンにおいては稀有な存在だ。
やはり一家を背負っている女性は違うのだなとローマンは感心した。

「いいだろう。まあ今の倍にしてやるがな。それくらい訳なくできる」

ふんと鼻を鳴らす。
財務大臣一家を舐めるなよ。

結局フィリシティが提案した今の契約を書面で取り交わし、明日には出立できるというので、ローマンは最初に比べて少し見直したと思いながら王家の別荘に戻ったのである。
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