夏目くん、一緒にカーテンを開けてくれませんか?
「なぁ、菊野。一体、何が辛かったんだ?いつも茶化してばかりで、本当の菊野の心は誰も分からない」

「それは・・・」

「きっと夏目は良い奴だ。菊野もそう思っただろう?」

上手く言葉が出てこない。

「本当に無理な時は先生が断るから、たまに夏目と話して欲しい。きっと、菊野のためになると思うんだ」

先生に頭を下げられ、私は断ることが出来なかった。

その日の放課後は、近づいてきた文化祭に向けて生徒の声が保健室まで響く。

校内の騒がしさと保健室の静けさの差に、私は何故か涙が溢《こぼ》れそうになった。
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