ハイドアンドシーク
それからも、東と西の小競り合いは日常的にそこかしこで勃発した。
もしや東雲さんまで?と思ってこっそり見に行ったこともあったけど、しっちゃかめっちゃかの現場にその姿はなく。
何度か行ってもいなかったから、たぶん元から参加してないんだと思う。
西のトップらしきひとも、おそらくいない。
ひとつ、気づいたこともあって。
東のみんなは体を動かせることをどこか楽しんでいる雰囲気があった。
けど、西のひとたちは皆えらく真剣な面持ちで。
なにかに焦っているようにも、
……恐れている、ようにも見えた。
「東雲さん」
「ん」
「西ってそんなにいうほど危険なんですか?」
「…まあ、身分社会ではあるな」
クラス内のカースト制度みたいなものかな。
自分よりも上の人間──ここでいうなら西のトップに気に入られるように、もしくは目を付けられないように西のひとたちは必死なのかもしれない。
「鹿嶋」
「んー」
「おまえベータだよな」
ぴくり、制服のボタンにかけていた手が止まる。
訊いておきながら、すでに知っているような口調。
念の為の確認をするかのような。
「……ベータですよ。昔、教えあったでしょ。それより今から着替えるから、こっち見ないでくださいね」
「得にならないことはしない」
「ちょっとそれどういう意味ー?」
怒りのポーズを装って返しながらも、さっき言われたことを胸の中で反芻する。
────ベータ。