婚約破棄されたので、好きにすることにした。
「登録、今日じゃなくてもできるよね」
「ああ、そうだな」
 エーリヒも彼を警戒しているようで、クロエを抱きしめたまま離してくれなかった。
「すぐに依頼を受けるわけじゃないし、もう少し考えてからにします」
 そう告げると、サージェは大袈裟に溜息をつく。
「魔力登録を希望していると聞いたので、他の仕事を放り出して駆け付けたのですよ。簡単に言われても困ります。それに魔力があるのなら、魔力の登録は必須ですから。さぁ、向こうの部屋に行きましょう」
 彼は、どうしてもクロエを奥の部屋に連れて行きたいようだ。
 もう一度クロエに向かって伸ばされた手を、エーリヒが振り払う。
「そんな規約はなかったはずだ。今日はギルドの登録と、パートナー契約だけで」
 そう言いかけたエーリヒの腕を、サージェが掴んだ。
 指が白くなっているので、相当な力が込められているのだろう。
「エーリヒ?」
 慌てて縋るクロエを、エーリヒは片手で背後に庇う。
「何のつもりだ」
「この国の貴族がどんなに腐敗しているか。よく知っているんですよ。あなたは魔力のある移民の女性を、魔石作りのために酷使するつもりなのでは?」
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