婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 サージェは掴んだ腕に、雷撃の魔法を放ったようだ。声は出さなかったが、相当の痛みがあっただろう。
「大丈夫? 痛くない?」
 解放したエーリヒの腕を胸に抱きしめて、クロエは狼狽えていた。
「君は騙されているんだ。目を覚ませ」
 なおもそう言う彼の頬を、クロエはカッとして思い切り叩いた。
「勝手なことばかり言わないで! エーリヒは、(父と婚約者から)逃げ出した私を(便乗して)追いかけてきてくれたの。ふたりですべて(のしがらみ)を捨てて、(相棒として)一緒に生きようと約束したのよ」
 エーリヒの提示してくれた設定を使い、本当のことを上手く隠しながら本気の言葉をぶつける。
 そして彼を庇うように前に出た。
「クロエ……」
 そんなクロエを、背後からエーリヒが抱きしめる。
 それはどう見ても、互いに想い合う恋人同士にしか見えなかった。

 そして。
「すまなかった」
 魔法ギルドの奥の部屋で、クロエはエーリヒと並んで座っていた。
 目の前にいるのは、魔法ギルド員の職員と、先ほど盛大な勘違いをしてクロエに平手打ちをされたサージェだ。
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