婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 この国の王女であり、異母妹(いもうと)のカサンドラは魔女である。
 呪文を使って魔法を使う魔導師とは違い、願うだけでそれを叶えるというおそろしい存在だ。
 昔から彼女を怒らせてしまうと、声が出なくなったり足が動かなくなったりした。
 今回もまた何が原因かわからないが、妹を怒らせたのかもしれない。
 叶えられない願いはひとつもなかったカサンドラは、かなりわがままな性格だ。何が引き金になってその怒りを買うのか、まったくわからない。
(女のくせに忌々しい……)
 そう思うが、その力は圧倒的で、国王である父の言うことしか聞かない。
 だが、まさか婚約の解消を言い渡した瞬間に声が出なくなるとは思わなかった。
 そのタイミングの悪さに思わず溜息をつく。
 婚約者のクロエは、あのまま逃げ帰ったのだろうか。
 思えば彼女には、婚約破棄という事実は重すぎたのかもしれない。だから、どうしたらいいかわからずに逃げたのだ。
(仕方がない。今回だけは、謝ったら許してやるか)
 そう思っていたのに、それからなぜか不運が続いた。
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