前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
 ちょうど別件で会いに来ていた際に、出迎えも兼ねて頼まれたらしい。

「それは構いませんが……お二人はよろしいのですか?」

 会うのが難しいならば今日は帰ってもいい。そう伝えれば、二人は慌てた。

「いいえ! 殿下はぜひ待っていてほしいとおっしゃっていましたから」
「それに私たちもルティア様とお話したいですわ」

 ルティアもそう言われれば断ることはできない。

(それに何だかんだ言って、わたしも殿下に会いたい……)

「わかりました。ではよろしくお願いします」

 よかった! と二人は安堵した様子で顔を見合わせたのだった。

「お待ちの間、離宮の部屋を使ってほしいとのことでした」

 そう言って二人はルティアを離宮の方へ案内した。いつも会う場所の執務室はテオバルトが使用しているからだ。

 西の離宮はひっそりとしていた。こんなところで待たせることに少し違和感も抱いたが、テオバルトは時々突拍子のないことを思いつく。以前も昔の王族が庶民の気分を味わいたくて王宮の敷地内に作ったという「村里」に案内されたことを踏まえれば、離宮を指定したのも何か理由があるのだろうと思った。

(今日は期日の最後だし……)

 ルティアはそう考え、素直に二人に付いていく。廊下では使用人や警備の騎士ともすれ違わず、ある一室へ通される。お茶の準備がすでにされており、ルティアは二人と一緒にカップに口をつけた。紅茶は令嬢に注いでもらった。

 適当に世間話をしながらも、ルティアはちらちらと扉の方を見てしまう。

「もう少ししたら、お着きになると思いますわ」
「あ、ごめんなさい」
「いえいえ。いつもお会いになっているんですから、落ち着かないでしょう」
「殿下は本当にルティア様に夢中ですものね」
「そんな夢中だなんて……」

 誤解だと言いかければ、扉が叩かれた。

「ナイスタイミングですね。きっと殿下でしょう」
「ちょうどいいわ。お二人のお気持ちをすばりと聞きましょう、お兄様」

 ルティアは二人の視線から逃れるように立ち上がり、自分から彼を出迎えに行く。

「殿下。お待たせし、ました……」

 相手の顔を見て、ルティアは息を呑んだ。

「お久しぶりです。ルティア嬢」
「公爵閣下……」

 そこにいたのはテオバルトではなく、リーヴェスだった。

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